Bブロックの感想です。ネタバレしてます。一応、注意書き及びスタンスをリンクしておきます。→■
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B01 異端審問官と異端の聖女
聖女と異端審問官、そしてテーマは「火」とくれば行く末は想像できます。様式美です。そこにミステリのエッセンス。
賊の性別は想像できましたが、正体に驚きました。聡いユスティティアは王太子を見た瞬間にすべてを理解したのですね。きっと教皇との関係も薄々気付いていたようにも思えます。しかし王太子ももうちょっと行動を考えましょう。単独行動し過ぎです。むざむざ妹とを死なすことになったんですからね。
それにしても教皇は自業自得(天罰当たってると思いたい)として、すべてを押し付けられたお兄さんの方はかわいそうでした。
B02 誰か
この結末が気なる。わたし、気になります! 脳内で彼女のヴィジュアルは竹下夢二の美人画で再生されたました。儚げな美しさ。最初、老人と彼女の関係をもっとドライなものだと思っていたんですが、どうやら愛情で結びついてるようで、安心して読めました。最後で亡くなるとしても後味悪くないし……なんて思ったらこの結末ですよ。彼女の愛情は激しかったんですね。
Twitterでもどなたかがおっしゃってたんですが「交響曲のようにやかましい夕焼け」は素敵な表現です。その後に続く不吉な出来事を予想させるような不穏さも感じました。
B03 <激情>の魔女
ツンデレ万歳! 魔女なのにヤンキーちっくな口調で微笑ましい。「齢二百程度の小娘魔女」ですもんね! むやみに怖がらせようとするのもかわいらしい。
村人にとっては恐ろしくもない有益な魔女だと解れば、受け入るのは当然のことです。そもそも「豊穣を司る」魔女なわけですしね。イルは良いことしたわけですが、それだけではなくて<激情>の力に影響されず、魔女の側に居られる人間は希有な存在です。おまけにベタ惚れですよ。二人ともお幸せに!! って砂吐いちゃいますよ。
B04 サンシャーラ
「すべての死は、サンシャーラのものだ」といのうは理不尽で、「黒衣の民。名をサンシャーラ(略)墓守」と説明されていても大切な人を亡くしてすぐのユーリが受け入れることはない。そう思って読み進めると、どんでん返しが待ってるわけですよ。
「とくべつな想い――それはたいてい、強い未練や、なにより怒りだ」と少年は云い、ユーリは「私はあの子を憎んでた……」と妹のシーラへの感情を吐露するけれど、きっとユーリの怒りは妹(両親)をちゃん送れなかったことに根底にあるように思えます。妹も自分をもないがしろにした周囲への怒りで現世に残り墓守になるというのは酷だなぁ。
飄々としている少年も、強い未練があったわけですよね。それが気になりました。抱擁というのがヒントになるのかな?
B05 人類に炎を取り戻してくれたペンギンのお話
童話調なのに「見た目が渋いおじさま」とか書いちゃうノリの良さに作者さんのセンスを感じるでヤンス。
全体的にお約束ないっぱいで細かいことを気にしたら負けです。こ心地よい展開に身を任せて読んでいくのが吉。ウィリーはペンギン族の勇者なんですよね? なにして勇者? と思ったら「アッシは……アッシは、勇者になれたでヤンスかね……?」とあるし、自称勇者ってことだったのかな? なにはともあれ、ウェンディーちゃんと結婚できて良かったです。めでたし、めでたし。
B06 闇盗人
タイトルから和風ファンタジーもしくは伝奇小説を想像しました。
入れ子構造になっていて趣向が凝ってますね! こういう構成好きです。
物語のアーニャは解放された後、どうなったんでしょう? そして盗人は死んでしまったのか、それとも生きているのか? そしては龍はどうなったのでしょうか? 男は北の方から来たようですし、想像というか妄想が広がります。
巫女姫は王族なのに驕ったとこのない、むしろ枯れてる感じだったのに最後はラブラブですよ。意外にこのブロックもリア充多くないですか?
B07 魔法使いの弟子と赤の受難
うわっお師匠様、スパルタ!! いいぞ、もっとやれ!
作者さんはファンタジー書き慣れた方なんですかね? 「おかげで何時でも家中ほぼ真っ暗なので、暗闇で光る蛍光石を入れた瓶を首から下げ、私は階段を下りていきます。」とサラリとどんな世界かが描写されていて、上手いなぁと感心しました。しかも伏線になってるし。
師匠もいい味だしてるけれどユリがかわいらしかったです。「そんなのやってみなきゃ分からない! わたしを人間に戻してくれるのはオリガしかいないんだよ!」と云ってのけられる素直で意思の強い娘さん。それなのに、恋する乙女の盲目さって、純粋な分馬鹿っぽくもあるという魅力的キャラクターでした。この話はリア充予備軍。
B08 クルーム・ルージュは屍に帰す
タイトルから女性の話だと思ってました(懺悔)。
全体の雰囲気が耽美かつ妖艶。作者さんは、この世界観を書き慣れた方なよう気がします。
第三王子が人の心がある人で良かったです。母親が自分のために兄を謀殺というのは重い過ぎます。市井の屍炎師にまでお見通しでは、国中そう思ってる状態なんでしょうね。第三王子がルージュに出会った時に声で判るでしょうよと思いましたが、お付きの目の前で「兄上」って云ってしまうとルージュに難が及ぶと考えての行動だったんですかね。
B09 狐の嫁入り
時代劇だ! 人情ものだ! NHK木曜時代劇でやってても違和感ないですよ。
破落戸以外、みんないい人で(親父は盗人だけど)泣けてきます。お紺さんの心中を慮ると特に涙が……父親から固く言い含められてるとしても、赤の他人にしなくてはならない(おそらく無縁仏として扱われてる)。まっすぐな良い娘さんのようですから、太吉に嘘を付いていることも後ろめたいでしょうし。それでも幸せのために、そっと心にしまっておくんでしょうね。
「雨粒を落とし続ける空を見上げると、お紺はにっこり微笑んだ。「ああ、お父っつぁんの云った通りになったね」」
私の湿っぽい感想を吹き飛ばすような最後の一文が、明るい未来が予測できて、読後も晴れやかな気持ちになりました。これもリア充。
B10 Kindling !
西部劇調で、明らかに悪党視点でどうなるんだろうと読んでいったら、こうきましたか!
全体的に軽妙な台詞回しが多くて、読んでて楽しかったです。悪党三人組もエリュとアルカにやられっぱなしで、どこか憎めないキャラクターになってました。
ところでエリュとアルカは何者なのでしょうか? いくつかキーワードがありますが、謎が多く、プロローグ的なお話に思えます。それだけに情報が詰め込まれて、読んでいて少し疑問が残りました。
最終的にエリュは寵姫になる(どうしてそうなった感が漂うけど)って書いてあるし、これもリア充かな。
B11 夜の灯しびと
( ;∀;) イイハナシダナー。 登場人物が全員善人だ。ほっこりしました。あと年の差萌え!(これはリア充判定していいの?)
メイのような境遇の子どもがより酷い目に合う話は読んでいて気が重くなるので、幸せな未来に向かう話は本当に読んでて気持ちがいいです。かわいそうな子がよりかわいそうな目に遭う話は現実でもフィクションでも多過ぎて、ちょっと食傷気味です。健気に生き抜いて幸せ掴ませてあげてよ!! 神様、仏様、作者様!!
脱線しましたが、「胸の奥で音がした。あったかい火が灯る音がした」この火が消えないように、メイに明る未来が訪れることを信じています。
B12 キタキタ
ホラーだ。うわっ夜に読まなくて良かったです。
「秘密とは等価交換」と物語のキーになるフレーズ何度も繰り返されて、なんとなくハガレンを思い出したのはここだけの秘密です。「秘密=キタキタ」であるなあらば、主人公は何を等価交換したのだろう? 相手の命をもらった? ふと、それが疑問に残りました。どちらかといえば、押し付けてますよね? といいつつも、ホラーは理不尽で不条理であるから怖いんであって、明確な説明はいらないとも思うのでした。
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